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16.女子高生(おっさん)と休日とお嬢様


〈ピンポーン〉


 休日、自宅で小説を書いているとチャイムが鳴る。

 家族は部活だったり、休日出勤だったり、買い物だったりで不在。

 仕方ないので対応する。


「はーい」

「ご機嫌よう、アシュナさん。本日はお日柄も良く絶好の逢い引き日和ですわね。ですが……チェーンもせずに不用意に来客応対しないで下さいまし。無用心が過ぎますことよ」


 来客はうちの高校の生徒会長【皇めらぎ】だった。休日用にシフトチェンジしたその姿形(ナリ)は、どこからどう見ても清楚なお嬢さん風だったので思わず見蕩れる。

 メラギには告白されて(?)以来、なにかと付き纏われている。悪い気は全くしないので(男に近寄るなと口煩(くちうるさ)いけど)無下にすることもできず、『休日も共に過ごしたい』と潤んだ瞳で言われ、こんな運びになった。


「あら、ご両親やご令妹さんはいらっしゃらないのですね。ご挨拶と共に結納の許可を頂こうと思いましたのに……少ないですがここに200万ほど包んでいますのでお渡し下さいますこと?」

「受け取れませんよ!?」


 良い出自(とこ)のお嬢様は最初からぶっ飛んでいた。どうやらテンプレ通り、庶民的な生活や感覚を持ち合わせてはいないらしい。

 とにかく俺は自分の部屋にメラギを通した。



「ここが……アシュナさんの御部屋様……」

「いや、御部屋様は意味が全然違いますよ?」


 まるでファンタジー世界を見たかのように大袈裟に惚けるメラギに突っ込み座らせる。メラギは初夜を迎えるかのように緊張しており、頬を紅く染め、もじもじしていて落ち着かない様子だ。かくいう俺も、女の子を部屋に入れるのは初めての経験なのでどうすれば良いか全くわからない。

 とりあえず紅茶とお茶請けとして適当にキッチンにあった市販菓子を皿に出す。


「……これはなんですの?」

「え……? 『ちんすこう』だけど知らないんですか?」

「ちんっ……!? しっ……知りませんわよ下品な!」


 メラギは更に顔を紅くして狼狽えている。

 天然鈍感系主人公ではないおっさんの俺は、その意味をいち早く察知して追従する。


「もしかしてち●こを想像したんですか?」

「ーーっ!!!」


 めっちゃ睨まれた、ヤバい。

 どうやら調子に乗ってしまったようだ、少し反省する。男の姿のままだったなら間違いなく死刑罪(セクハラ)か良くて島流しだ。


 だけど、メラギは予想外の反応を見せる。

 悲しげな表情をして涙を流したのだ、そして、俺に問う。


「……やはり、貴女は……男性がお好き……なのですか?」

「……へ? いや……そんなわけないじゃないですか。普通に女の子が好きですけど」

「!」


 質問の意図が理解できず、嘘偽りない言葉を述べると、メラギは一転ーー今のが演技かと思われるほどにパーっと明るい表情になる。

 このお嬢様は何故に俺をゲイだと勘違いしているのだろうかーーと、思考を冷静にしてみると勘違いしているのは自分だと(ようや)く気付く。俺は今、女の子だったという事に。


「ーーんむっ……!!?」


 そして、その言葉をきっかけに、メラギにベッドへと押し倒され、重なり、キスをされた。

 

                   〈続く〉

 

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