真の弱肉強食を知る⑥
あまり進展してません。
あっちの世界で生きていた頃、オレは仕事がら朝は早く出勤し、夜も遅くまで残業することが多かった。だが最近の労働環境改善の動き、そしてコロナ禍の影響もあり時短とはいかないまでも、以前ほど残業せずに帰れるようになった。まぁ、その代わり働く人は増えたけどな。
おかげで以前よりテレビ番組が見れるようになったオレ。動物番組もしかり。オレは猫や犬目当てではあるが動物番組が好きだ。だが1時間番組において、ずっと猫だけ、ずっと犬だけといった特集をすることは稀だ。チャンネルを変えるのが面倒なオレは、猫や犬が番組で取り上げられた後も、チャンネルはそのままなことが多い。
ハイエナが群れをなして行動することは知っていた。なぜだか、ハイエナはよく動物番組で取り上げられている気がするんだが?もっともそれはライオンやチーター、ガゼル特集がメインであって、ハイエナはおこぼれを狙うずる賢いヤツという脇役扱いだがな。
そういった番組で登場するハイエナは、たいていがブチハイエナであることが多いんだが、今、オレの周囲にいるハイエナはブチはなく、淡い茶色をしていた。ブラウンハイエナとでも言うのだろうか?きっと親子か兄弟に違いない。
5頭ほどが一定の距離を取りながら、オレとオレを襲ってきた2頭の狼を取り囲むように立っていた。
ハイエナたちは豚のようにブヒブヒ鳴くんだな、こんな状況下でもオレはそんなことを思った。
テレビ越しでしか見たことがないから、あっちの世界のハイエナの大きさがどれほどかは分からないが、オレの周囲にいるハイエナたちは非常に小柄だった。5、60センチほどで、狼に比べて格段に小さかった。
狼たちはハイエナの優に2倍はある。とにかくデカイんだ。体の色は黒に近いグレーをしているが、何頭かは茶色みを帯びていた。狼も群れで行動すると聞く。今、オレの目の前にいる狼たちは、ハイエナのそれよりも多く、見えるだけでもざっと10頭ほどだ。
オレがテレビで見たハイエナたちはライオンたちが食べてる横から咥えて持っていこうとしていたが、さすがに自分たちより体格も大きく、数も多い狼たちの目を盗んで獲物を横取りしようなどとは思わないようだ。
狼がいる間はハイエナたちに襲われることはないだろうとオレは確信した。つまりオレが相手をしなきゃならないのは10頭の狼たちだけだ。まずは。
オレは手持ちの武器を確認した。鈍器もとい石斧に石ナイフ、そして石鍬。非常に心もとない。付け焼き刃じゃなくてちゃんとした石槍を作っておけば、狼たちと互角に戦えたかもしれないのに。
オレは先ほど折れた石槍の柄と、割れた刃を思い出していた。狼の皮は硬く、肉は厚いようで、さっき石槍を向けた狼は血の一滴すら流していない...。
オレにはまったく勝ち目ないのか?
【作者より】
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2021.8.30 Mon. 11:17 初投稿