土鍋を作ろうと粘土掘りに行ったら、第1村人を発見した⑱
「あわわわわわっ。」
オレはギャグ漫画ぐらいでしか聞いたことのないセリフを口にしながら、その場でペタンと尻餅を付いた。あっちの世界で暴漢に襲われた時にだってそんなセリフは吐かなかった。だが、この時の凄惨な光景を目にした瞬間、自然と口をついて出てしまった。それぐらい、オレにとっては衝撃的な光景が広がっていたのだ。
目の前には血しぶきがたっぷりと付いた帆布の崩れた白いテント。その下には、今までどこにいたんだろうかと思われほどたくさんの、狼なのか犬なのかがたむろしていたのだ。
「ひっ。」
こんなセリフ、人生31年で初めて口にしたわ、って言葉が次々と出てきたんだが、そんなことなど今は気にしてなどいられない。
オレはシベリアンハスキーやシェパード犬、はては、ボルゾイまで。東京は人口が多いだけあっていろんな犬を見る機会がある。さすがにボルゾイの大きさにはビビッた。配達中に遭遇したんだが、飼い主に連れられて散歩中のボルゾイがやたらめったらすれ違う人に吠えて、向かっていきそうだった。おいおい、そんな危険な犬を散歩させるなよ。ドッグランとかに連れていけよ、と内心思ったものだが、飼い主はどこ吹く風。しっかりしつけできねーんなら飼うなよ、と思ったものだ。
だが、そんなボルゾイ。横を通りすぎた時に気がついたんだが、背丈や体長が以上にデカイ割には、横幅?まあ、顔を正面から見た時だな、そっちの横幅はめちゃくちゃ細すぎて、ある意味、滑稽に思ったりしたもんだ。
今、この異世界において、オレの目の前にいる犬だか狼だか知らない生き物は、そのボルゾイよりもはるかにデカかった。横幅はそれなりにある。下手をしたらオレよりデカイんじゃないかって思えるほどのデカさだ。オレが腰を抜かしたのにも頷けるだろう?
何びきぐらいいるんだろう?パッと見、10頭以上がいるはずだ。うち半分以上が、崩れたテントの外側で食事をしている。それもあきらかに人間を、だ!
オレはヤツらが夢中になって貪っているのが人間だと分かるまで、少し時間がかかった。なぜなら、もはやほとんど人間の姿を保っていなかったからだ。
衣服も身に付けておらず、はじめのうちは何を食べているのか分からなかった。なにしろ、ヤツらは骨すらもバリバリと噛み砕いていたのだから。
「うわっ。」
狼らしきソイツらが食べているのだが、人間、すなわちこの世界に生きていた異世界人だと気づいたのは、崩れた帆布のテントに潜っていた、何頭かの狼たちが、頭を激しくフリフリと揺さぶりながら、テントの下から、人間の死体を引っ張り出したからだった。
「ひっ。」
もはや、オレの口からはそんな言葉しか出なかった。腰にもまったく力が入らないオレは、次は自分がヤツらに襲われる恐怖に、血の気が失せて唖然としていた。
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2021.8.30 Mon. 10:24 初投稿