土鍋を作ろうと粘土掘りに行ったら、第1村人を発見した⑬
日中、だいぶ暑くはなってきたが、それでもあのうだるような暑さの今の日本の夏に比べたらはるかに過ごしやすかった。ああ、だからセミのような鳴き声がずっとしているんな、と妙に納得する。その鳴き声の主をいまだ見たことはないが、きっとこれまでの動物や植物のように、オレが暮らしていたあっちの世界のセミに似た何かなのだと思う。
湿気はあるが、それ以上に風が吹いていて涼しい。あっちの世界では気温は高いが乾燥した空気のエジプオトなどは涼しいらいことを知って驚いた覚えがある。できたら乾燥していて欲しいが、それは飲料水の確保には厳しいだろうし、アトピー持ちにとっては乾燥しすぎるのも症状が出やすくなるので問題なんだ。
オレも年を取ってからアトピーの症状が出やすくなった気がするしな。アトピーと医者に診断された時のオレは、大慌てでシャンプーやリンス、ボディソープなんかもそれ用のかなり高い製品に買い換えたもんだが、あまりの高値にいつまでもそれらを買うには無理があった。だってオレの他、おふくろや親父はその辺に安く売っている物で事足りるんだから、わざわざオレに合わせてそんな高い物は買わない。
必然、オレはオレのためだけに、オレ用にそんな高い物を買うはめになっていたわけだ。余談だが、アトピー向けのそういった商品はそんじょそこやらのスーパーやドラッグストアには売っていない。場所によっては皮膚科のある病院近くの調剤薬局に置いていたり、そういった皮膚科の窓口にチラシがあったりするんだが、たいがいは置いていないことの方が多い。
そういうわけで、基本、ネットショップで購入することになるんだが、これまた面倒くさいし、一度に買い置きしようとしても高額すぎて、オレにはとてもじゃないがそんな買い方はできなかった。それで次第に、肌にやさしい的な市販製品にシフトしていったわけだ。弱アトピーだったしな、オレ。
以前は普通に使っていた商品なんか、別にそういった売り言葉がない物が多かった。男なら気にする二十代後半になってから気にし始めた薄毛予防とか、髪に良さそうなシャンプーやリンス、匂いが良かったり、オレ的に使い勝手が良かったヘアムースやワックス。
ところがアトピーになってからは、それが地肌にやさしい、手にやさしい、などどいう性能よりも品質重視に変わった。市販品にシフトさせてみても、やはり通常商品よりはいくぶん高めだったが、それでもアトピー専用の物よりははるかに安かった。
肌の強い人が羨ましいよ、ホント。
オレは、今後も肌トラブルで悩まされそうなことに頭を抱えながら、粘土が掘れそうだなと思われる野生の勘を便りに、迷子紐を都度、作って設定しながら、探しては掘って、探しては掘ってといったことを2、3時間ほど続けた。
そろそろ休憩を取ろうかと、腰を伸ばしたり曲げたりと解していた、そんなとき、オレは視界の端、左側の端に違和感を感じてそちらを振り向いた。
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2021.8.30 Mon. 1:31 初投稿