土鍋を作ろうと粘土掘りに行ったら、第1村人を発見した⑩
オレは迷子紐を作りながら、適当な位置で土を掘り返してみた。今回は石桑を持参だから、さっきよりは深く掘ってみた。土に至る前に腐葉土を払わなくちゃならなかったんだが、素手のオレにはあの触感が非常に気持ち悪かった。つかんだそばからポロポロと、なんだか分からない虫が転がり落ちっているんだが、そちらを意識しないように心掛けた。
だが、さすがにミミズっぽい生き物がチラリと視界をかすめた時には、あっちの世界でも馴染みのあるミミズがいる!?と二度見したりもしたんだが、やはり完全には同じではないようだった。
すっごい、細い毛、ハブラシの毛のような細さのような短い足が無数に生えてたんだ。そいつが風になびいてるかのように、ウネウネ動いてるんだ。
「うぇっ!気持ちワルっ!」
オレは持っていた腐葉土ごと、そいつを放り投げた。
ウェッ、オエッ。
オレは酸っぱい物が胃を遡ってくることを察知して、思わず地面に四つん這いになった。地面に吐き出したそれ、汚くてすまん、それは何の吐瀉物も含まれておらず、胃液のような粘っこい透明な液が出るだけだった。リンゴはすでに消化されてしまったんだろう。
こんな姿、誰にも見せられないな。オレは吐き気が治まると、腐葉土を触ったり土を掘り起こしたりして汚れてしまったにも関わらず、口許を腕で拭った。
この時、タオルが欲しい、布が欲しいとオレは痛切に思った。水浴びをして体を焚き火で乾かしていた時以上に。
オレは、ここに至る過程で、すでにアロエときのこを見つけてそれらを採取していた。アロエは取りすぎてもオレしか使わないし、傷んでしまったらもったいないから2、3本しか採取していない。
昔、オレの擦り傷のために、ばあちゃんが庭に生えていたアロエを千切ってくれた時のことを思い出した。アロエは一ヶ所から生えていて、そこから葉なのかな?茎なのかな?どっちか分からないけど、太いから茎にしておく。一ヶ所から茎が枝分かれしているような感じで生えている。
ばあちゃんがそれをその根本からポキッと折っている姿を覚えていたオレは、迷うことなくその位置からアロエを折った。まぁ、アロエ、アロエとは言っているが、アロエもどきだろう。アロエは茎の左右にトケドケとしたものが生えているんだ。トゲっていっても針みたいなモノじゃない。茎を固くしたような感じだ。刺さってもそこまで痛くない。
そのトゲトケ、オレが暮らしていたあっちの世界は茎と同じ緑色だったんだが、こちらの世界のアロエは茎は緑なのに、そのトゲトゲが紫だったんだ。紫って・・・。大丈夫か心配になったオレではあるが、薬のない現状ではイチかバチか試してみるしかないわけで。まだ試していない。
手やふくらはぎの傷用だ。オレは今泥だらけだから、また小川に戻って体を洗う必要があるしな。そんなことを考えていたオレは、消毒用にアルコール、つまりは酒でも作ろうかな、と思った。もちろん、酒の作り方などまったく知らない。
確か、元いた世界で個人で酒を作ろうとしたら犯罪だったしな。場合によっては果実酒や梅酒でもそうなるらしいって、なんかたまたま目にしたネット記事でそんなことが書いてあったことを思い出していた。
うん、現状、異世界だし。消毒薬代わりだし、許してくれるよな?正当防衛?何て言うんだ、こういう場合?
【作者より】
【更新履歴】
2021.8.29 Sun. 23:18 初投稿