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リアル異世界転移 お約束のチートはないんかい!  作者: 木浦木ロロ
ここは異世界?
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第1チュートリアル達成

パキパキと小枝を折りながら、オレは小川沿いを歩き続けた。キョロキョロと辺りを見回しながら。


やはり異世界だ。見たこともない植物で溢れかえっている。だが、まだオレのパンツとなり得る葉っぱは見当たらない。


くっ、さっきの葉が()れなかったことが、めっちゃ悔やまれる。だが、あの木に再チャレする気力は、オレにはもうない。あちこち()れた箇所がヒリヒリと痛いのだ。


その痛みを我慢してトライするより、オレはもっと気軽に採れる葉を探すことにしたんだ。なぁに、こんなに広い、たぶん、森なんだ。もっとナイスな位置に生えてる、ナイスな葉があるに違いない!


それに最終的には、バナナの葉とまではいかないまでも、少し大き目の葉を寄せ集めて、どうにか繋ぎ合わせてもいいかなとも思っている。ま、具体的にどうやって繋ぐかまでは考えていないんだが。


よし、今、ちょっと考えてみる。


・・・考えてみた。うん、オッケー。


パッと浮かんだ方法な。これ。まず、何枚か、何十枚か分からんが、葉をとにかく集める。さすがに百枚とかは要らんやろ?・・・たぶん。


で、その葉の一枚一枚の、先っぽとかに、その辺に落ちてる、ちょっと先が尖って丈夫そうな小枝を拾って、で、葉っぱの先端とか根本(ねもと)に、一ヶ所、穴を開けていくんだ。うわっ、想像するだけで、めんどくせー作業だが、布を織る、っていうか、(はた)を織るよりゃーマシだな。


で、それでもって、その葉の穴、1枚ずつに、蔓紐でも通そうかなって作戦。


幸いなことに、(つる)は、太いものから細いものまで、そこら(じゅう)にある。それもオレの手の届く範囲に、わんさか!


あ~、あの葉もこれぐらいの位置まで垂れ下がっててくれりゃー良かったのによぉ~・・・。さっきのバナナの葉だったら、ほんの数枚(すうまい)あれば事足りたのによぉ~。ほら、少しズラシて重ねてさ、暖簾(のれん)みたいに。それだったら、あっという間に葉っぱパンツというか、腰簑(こしみの)みたくできるやん?


でも、あの葉っぱ、採れんかったし・・・。


って、いつまでも過ぎたことに文句を言ってる場合じゃねーな。さっさと服をどうにかしねーとな。もしかしたら、ここ、夜になったらめっちゃ冷え込むかもしれねーし。自然をナメたら痛い目に()う、つぅーしな。


さ、気を取り直して、花ビラ警戒!あ、これ、オレ的名称な。昔からこういった独自の呼び方っつーか、名前を付けんの好きなんだわぁ、オレ。んでも、あんま親しくねぇ、他人には言わねーぜ?だってそうじゃん?なに、コイツ?ってドン引きされるのがオチじゃん?オレだって、そんなヤツがいたら、ドン引きするしなー。


でもさ、実際、言葉っうーか、公式な名称とか知らなかったり、そもそも、そんな言葉がこの世に存在してなかったりしたらさー、他の人に、表現しづらくね?毎回、そのことを説明しつつ会話を続けてかなきゃならないんだぜ?


それだったら、国語の授業的に、今、ここでこれを○○と呼ぶ、とか、数学の授業的なら、ここでこれを○○と定義する!とか言って、最初に言っといたら、以降、その名称で説明していけるじゃん?その(ほう)が良くね?効率いいじゃん?だから、オレは、よくオレ的心情というか、表現を、勝手に命名して使うんだ。擬声語とか擬態語とかもな。


というわけで、オレがヘンテコな表現しても、気にしないでくれ。


まあ、でも親しいヤツの中にもさ、たま~に、めっちゃ国語とか、文章とかに、こだわりがある人なんかがいてさ。オレのオリジナルな言葉遣いを、ど~しても受け入れられないって人がいたけどな。ムッとしたり、なんでそんな言葉遣いをするのかって、お怒りモードになったり。


しゃーねーやん、他に適した表現をオレ、知らね~んだもん。特に、擬声語とか擬態語(ぎたいご)って、表現できるのに限界なくね?世の中の事象を表現しきれんやん。ってわけ。日本人ならなんとなくニュアンス汲み取れるやろ?ってノリ。


さすがにオフィシャルっつーか、社会人モードの場合は、そんな言葉遣いはしないから許してくれ。オレはちゃんとオンオフを切り替えられる男だ。今はオフなんで、勘弁してくれよな!


オレは、あっちの世界では、家族とか、めっちゃ仲がいい友達には、気がねなく使ってたなぁ。まあ、長いつきあい、気心も知れた仲、家族や、そういった友人連中は、何も言わず、オレの意図を汲んでくれたわぁ。いや~、ありがたかったよな~。


・・・。もう、あいつらには会えないのかな?オレ・・・。


あ、いかんいかん、めっちゃ凹んできた・・・。


あちらの世界で、なろう小説読んでた時は、異世界転生とか、異世界転移とか、してみてぇ!とかって思ってたよ。でもさ、実際、どうやら、しちまった今のオレが思うには、だよ?


知り合いが一人もいね~って、ボッチ状態って、めっちゃ、こう、なんか、どう言っていいんか知らんけどもさ~。


めっちゃ、不安なんだよね。寂しいってのはあるよ、もちろん。でもさ、不安の(ほう)がダントツなんだよね。


ここが異世界転移した異世界とかじゃなくって、じーちゃんになって、ボケちまったオレが見てる夢ならいいんだけどよー。そうじゃないかもしれないじゃん?って現状。


不安で不安でしょうがないんだ、オレ。


どうやって生きていこう?とかさ。未知なる動物がいたらどうしよう、とかさ。人がいない世界かもしれない、とか。食べ物とか飲み物とか、どうしよう、とか。


あちらの世界で便利だったあれやこれや、特に電気がない世界だったらどうしよう、とか。ケガや病気になったらどうしようとか。いろんなことがグルグルと頭を駆け抜けては、もう一周回ってくるんだ。


不安になってくるんだ。


でも、オレが不安になったからって、どうなるもんでもない。だから今、オレはそういうことを考えてちゃダメなんだ、って分かってる。ってわけで、できるだけ考えないようにしてるんだ。


それに、オレは、もう二度と死にたくはない!


だから、ここがオレの元いたあちらの世界なのか、異世界転移しちまった異世界なんだろうが、そんなことは置いといて、オレは今、安全に生きていくことを考えなければならない!


ってことで、さっ、服作り、服作り!


今のところ、人間(ひと)の姿は見えないが、いないとも限らないし。それに万が一、人間(ひと)がいない世界だったとしても、夜になったら冷え込むかもしれねぇだろ?だから、水の確保が大丈夫な現状、服は作っておきたいんだ。


ってか、普通に夜が訪れる世界なんだよな?ずっと日が昇ったまんまの異世界ってわけじゃね~よな?ま、もしそうでも、オレは夜、電気つけっぱでも寝れるし、昼でもアイマスク無しでも眠れる男だからな。心配はいらね~が。


それにもし夜が訪れない異世界であったとしても、オレが心配しなきゃならねーのは、そんなこっちゃねー。オレが昼間に寝てる間に、異世界動物に襲われちまう可能性の(ほう)が心配だ。今のところ、動物の姿は見えね~が。いないとも限らねぇし。


あー、もう考えても不吉なことしか浮かばね~な、オレ!忘れろ、オレ!考えるな、オレ!余計なことは考えず、今、目の前にある課題、服を、パンツをどうにかすることだけを考えろ、オレ!そのことに専念するんだ、オレ!


オレは懸命に自分を鼓舞した。自分に言い聞かせた。思い込ませた。パンツ作り!パンツ作り!


よし!再開すっぞ!


さて、んで、花びら警戒な。あれ、植物警戒って言ったっけ?まあ、てきとーなんで、どっちでもいいか。そこまで神経質にツッコまんでくれ。


で、それな。花びら警戒。さっきの花ビラみたいに、オレを食べそうな食人植物を警戒しつつ、行動しようぜって、オレ的注意喚起な。自分自身への!要するに油断するなってこと!


近くに落ちていた枝を拾って、その先でツンツンしたり、転がっている石をぶつけるぐらいだ。反応がないので、オレはその低木へと近づいていく。こういった時は油断大敵だ。オレはまだ花ビラ警戒を発動したままで、手には枝を持っている。ツンツンしながら蔓へと手を伸ばした。いざとなったら後方へ()()けるつもりで、いつでもそう出来るようにと、爪先に力を()れる。


よし、蔓をつかんだぞ。問題ないようだ。


オレは安心して、絡みついている蔓を(ほど)こうと、蔓をつかんだまま、体育の授業で大縄跳びを回す人であるかのように、腕をぐるぐると回した。時おり、低木の幹に張り付いた感のある蔓だったが、1メートルほどは(ほど)くことが出来たので、そこで力を入れてブチッと千切った。


この蔓は毛糸ほどの(ふと)さだったので、パンツを編むには少し太いかもしれないが、他に目ぼしい太さの蔓がなかった場合は、これを使うしかない。ただし、短すぎるので、やはり、バナナの葉サイズの葉用でしかない。もう少し蔓を集めなければならないだろう。


オレは、この花ビラ警戒をしながら、そういった紐代(ひもが)わりになりそうな(つる)を引っこ抜いた。その蔓はけっこう丈夫で、途中で切れたりすることもなく、いい感じの長さで引っこ抜くことができた。まあ、多少、力入(ちからい)れたけどもな。なんで、一本抜いただけで十分な長さのものが手に入った。腰紐っちゅーか、ベルト的な、それ用な。


で、こっからパンツの生地になりそうな、葉っぱを探していくわけだが、やっぱ、さっきの葉っぱほどの大きさの葉は、下方(かほう)にはあまり見当たらなかった。なので、かなりの枚数を集めなければならないようだ。


オレは、オレの手の届きそうな範囲の中で、なおかつ、極力広い葉で、プラス、そうそうボロボロになりそうもなく、毒々しい色や形状ではないものを探した。


おっと、これ、いいんじゃね?オレは目星を付けると、ブチブチと千切り始めた。もちろん、前もって花びら警戒、ツンツンもしたし、その()や、その()がぶら下がってる枝や、幹本体も問題なかった。


でも、どんぐらい必要なのかなー、これ。ま、多くても困ることは無いだろうし、何か他のことにも使えるかもしれないし。何より、タダでいくらでも取り放題だしな!


オレは、なんだか楽しくなってきた。何がコレ、楽しいんかは自分でも分からんのだが。ちょっと、アドレナリン分泌されてきた?ま、こんなことでも、楽しくないよりは楽しい(ほう)がいいけどな。


ルンルン、オレは誰もいないことをいいことに、ついには鼻唄まで歌い始めた。うん、オレ、鼻唄歌ったの人生で始めてかも。オレの親父は、風呂に入ってたり、テレビで好きな曲が流れてきたら鼻唄歌ってたけどな。オレは、音楽の授業か、ドライブで曲かけてた時か、カラオケぐらいでしか歌ったこと無いぞ、たぶん。


ま、いいけどさ。


さ、葉っぱ回収!回収!もちろん、その(かん)も、魔獣や肉食動物への警戒は忘れない。今んとこ、見たことないけど、いないとも限らないしな。出たら、ソッコー逃げる!ダッシュで逃げる!


で、こっちは動物警戒な。今、名付けた。適当。


よし、けっこう、葉っぱ、集めたな。でも、やっぱダメだな。さっきの蔓に通しても、全然長さ足りんわ。ちょっとふっといベルトにしかならん。いや、ベルトっつーか、ベルトにフサフサが付いた、おしゃれベルト?いや、すこっしも、おしゃれじゃねーけどな。


これは・・・。何段か作らんとダメだな。まあ、予想はしてたけどな。さて、どうやって多段にするか・・・。


オレはしばし、考えた。思考を巡らせたとも言うな。


・・・。


ん~、腰みの案しか浮かばないんだが?理想は、大きな葉であればハワイアンダンスの腰みの的な感じで、さっくり、サクサク作れると思うんだが。が、大きな葉っぱが無い・・・。ってことで、大きな葉っぱ的に、さっき1本の蔓を通したヤツを1枚、葉に見立てて、それを何枚も作っていく・・・。あ~、めんどくせ~。


でも、(なん)も無い今、そういった葉っぱや蔓でどうにかするしかねー。くっそー、どっかに木の皮が剥がれて落ちてないかな~。って落ちてるわきゃーねーし。木の皮が剥がれて落ちてるってどんな状態?


オレは想像してみた。木が雷に打たれて倒れたり、腐って根本(ねもと)から倒れて、中身くさって皮がちょっと浮き上がってるパターン。そんなん、あるんか?知らんし。


・・・あるいは・・・、なんか、木の幹の内側にいる幼虫とか食うために、動物とかが、樹皮をベリッって、()いじゃってるとか?


いやいや、そんな現場あったら、怖いやん。オレがまず危なくね?


オレは自分がした変な想像を、ブンブンと頭を振って追い払った。


いないいない!そんな動物なんか、この森には、この世界にはいない!存在しっなーい!


オレは、忘れた。今、自分が考えたことをキレイさっぱり忘れ去った。


もう、考えないぞ!


で、えっと、パンツ・・・。腰みのな。


ってことで、えっと、もう一枚、今度はちゃんとベルト的扱いをした蔓に結んでいく。


蔓は細い物から太い物まで様々だ。ロープ代わりにもなるし。オレはとりあえず手当たり次第引っこ抜くことにした。木々の幹に巻き付いていたり、枝から垂れ下がっていたりしている。オレは警戒しながら、まず手頃な低木の幹に絡み付いているように、ぐるぐる回っている蔓に目を付けた。


そんな感じで、オレは動物警戒・植物警戒を発動しながら歩きつつ、蔓を見つけては花ビラ警報を発令していた。そうこうして10本ほどの蔓を集めた頃に、ようやくバナナの葉サイズの葉を見つけた。


あった~、良かった~。探し続けて良かった~。ま、こんだけ広い森やもんな。どっかにはあるとは思ってたけど。さっき、ちょいあきらめかけてたけどさー。ホッ。


さいわいにもこの葉は、オレが手を伸ばさずとも届く程度の、低い位置に垂れており、また先ほどの葉よりも丈夫だったので、千切れることなく、引っ張れば根本から切ることが出来た。


ただ、その葉には、なんか気持ち悪い色の青虫がついていた。オレは顔をしかめた。だってその青虫は、やはり巨大で、緑だけじゃなく、黒や赤といった、いかにも毒あります!的な模様をしていたからだ。


ま、今んところ、虫ぐらいしかいねぇからいいけどさ。あ、あと、姿は見えねぇけど、鳥もいるっぽいしな。動物がまったくいない異世界じゃなくって、とりあえずは良かったよな。


だってイヤじゃね?オレと植物しか()ねぇ異世界って?もしくは、オレと植物と虫しかいない世界って?


オレは青虫がまだ()っているその葉を、その場にポイッと投げ捨て、もう一枚、別の葉を取った。こちらには虫がついておらず、オレはホッとした。


葉の幅はちょうどいいが、問題は、オレの腰に当てても、長さが足りるかってことだったが、当ててみれば問題なかった。オレは先ほど取っておいた蔓の中から、1メートルほどの長さの物を抜き出し、バナナの葉、バナナの葉じゃないが、似ているので、そう呼ぶことにする、をベルトの蔓に巻き付けて腰みののようにした。


悲しいことにバナナの葉では、パンツ形状は無理だった。いや、やろうと思えば出来るのかもしれないが、オレには出来なかった。


さて、パンツは出来た。次は、靴かな。いや、その前に腹が減ったな。

【作者より】




【更新履歴】


2023.10.21 Sun. 20:56 加筆・誤字脱字・読み上げアプリ修正

2021. 8.23 Mon. 14:16 初投稿

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