暗い中、焚(た)き火を組んでみた①
オレは嬉しさのあまり、ヒャッホー、ヤッタぜー!と叫びながらその場で小躍りした。オレしかいないから別にいいだろう?
しっかし、火打石。見つかったから良かったけど、マジで火花散るもんなんだな、アレ。
かなり強く打ち合わせないと付かないしな。どんだけイライラで勢いよく投げつけたんだよ、オレって思いはしたが、おかげで無事発見できたしな。終わりよければ全て良し!ってヤツだ。
第2拠点に戻れないオレは、ここで夜を明かさなければならなくなった。そう、今晩も徹夜だ。眠くはないな。逆に目がギンギンしてて、めちゃくちゃ冴えてる。
ああ、これってあの時の感覚と同じだな。学生時代、新作ゲームを発売日にすぐ買ってきて、2、3日ずっと寝ないでプレイしてた時の感じ?あん時、親や兄貴たちに内緒で学校サボってプレイしてたから、バレた時は親父にぶん殴られたっけ。うん、初めて親父に殴られたわ、オレ。
今となりゃ、そんなんもいい思い出ってわけだ。うん、おふくろ泣いたのには驚いたけどな。すまんかったってオレもめっちゃ反省したわ。兄貴にはばっかだなーと呆れられたがな。
・・・オレはまたもや皆の顔を思い浮かべて泣きたくなった。
なろうあるある。異世界転移じゃあ、元の世界に戻れないことが多い。オレももう戻れないかもしれない。もしこの世界で魔法が使えようとも、スキルが使えようとも、冒険者ギルドがあったとしても、オレはやっぱりそんなモンよりも元の世界に戻りたい。
そりゃあ、あっちの世界にいた時は、なろう小説を読んじゃ、ああ、オレもこんな冒険がしてみたいって想いを馳せてたもんだ。だが、それが現実ともなると、こうした楽しくもない厳しい現実が待っている。下手をしたらオレ以外には人間がいない可能性だってある。
ダメだ!考えちゃダメだ、オレ!ガンバレ、ほら、もう火が付けられるんだぞ。さっさと飲める水を確保するんだ!
落ち込みそうになる自分自身を、オレは叱咤激励した。
「よしっ!焚き火を組もう!」
【作者より】
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2021.8.26 Thurs. 21:20 初投稿