真夜中の襲撃者②
ブーン・・・。
ブーン・・・。
ったく、うっせぇなぁ(怒)!
オレは、せっかく一瞬だろうが深く寝入ることができていたのに、あの不快な蚊が飛ぶ音で、無理矢理、意識を引き戻された。
ったく!
蚊に刺されたらめっちゃくちゃ痒いし、何よりも異世界。あっちの世界でも海外なんかじゃ、下手したら厄介な病気を媒介するって聞いてたし。
なんだっけ?確かテング熱とかなんとか。まぁ、他にもいろんな病気があるんだろうけど。オレがニュース番組でたまたま見て覚えていたのは、そのテング熱だけだったが。
オレは意識が引き戻される過程でそう思い出した途端、急速に引っ張られる感じで目を覚ました。目を開けながらも、オレは本能的に蚊が飛んでいると思われる方向に向かってパチンと両手を叩いていた。
オレはナマケモノや猫なんかは殺せないが、虫なら殺せる。そうしないとばあちゃん家では生きていけなかった。と言ったら大袈裟だが。それぐらい、ばあちゃん家では虫に悩まされたんだ。ばあちゃん家は山の中の集落の一角だったから。
東京生まれで東京育ちのオレは、初めてあばちゃんの家に行くまでは、小学校の花壇や自分達が授業の一環で植えた鉢植えに植えた植物に留まる虫しか見たことがなかった。
アリやてんとう虫、青虫、ミミズ、ぐらい?
そんな狭い世界に生きてきたオレにとって、ばあちゃん家はまさにミラクル!いや、ジャングルだったと言っても過言ではなかった。
ネズミ、イタチ、でっかい蜘蛛、ムカデ、カエル、もぐら、団子虫、カブトムシにクワガタ、あとなんだっけ?まあいいや、とにかくいろんな虫を見た。気持ち悪いやら怖いやらで、オレと同じくオレとおんなじ環境で育ってきた兄貴は唖然とした。
毎夜寝る度に、座敷に蚊帳を張った中に敷かれた布団に潜っては、ビクビクと夜を明かしたもんだ。おかげで、虫は嫌いだが、けっこう耐性はついた。
ばあちゃんに感謝だ。
さて、目を開けたオレは、視界の端、縄梯子がある側に設置した防護ネットに動物の気配を感じ、ギョッとした。
「う、うわぁぁぁ!?」
【作者より】
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2021.8.25 Wed. 23:34 初投稿