バナナサンダル、そっこー改良
それからオレはもう片方のサンダルも完成させた。一度作ってしまえば、次からはかなり早く作れるようになる。さっすが器用だな、オレ。
だがしかし、オレは自分が天性の器用者じゃないことを知っている。オレは努力型の、似非器用者だからだ。
え?天性と似非の器用者って何が違うかって?バカヤロウ!全然違うんだよ。あいつら天性の器用者はなぁ!見ただけで、なんとなーくの感覚だけでいろなことがあっさりできちまうんだよ!
対照的に似非の器用者ってぇのは、結構練習して、やっと上手くできるようになるオレみたいな連中のことだ!なんでそんなこと知ってるかって?そりゃ、オレの兄貴が天性の器用者だからだよ!
何をやっても一発でできちまう。オレが、オレが苦労して従姉妹たちの髪結いをマスターしたってぇのに、オレの兄貴はなぁ、練習もなしに、あっさり見ただけでやってのけやがったんだ!あの時の驚きっていうか、ショックっていうか、悔しさってぇのは、忘れられない。
以来、オレはたびたび兄貴に天性の器用とはどういうものかを思い知らされてきたんだ。あいつらナメたらいかん!オレは練習しさえすれば器用になるタイプだったからまだ良かったが、練習してもめちゃくちゃ不器用なオレの親父は、ちょっと可哀想でもあった。
え?オレの親父が何を練習してたかって?それは、な、親父のやつ、あんなに愚痴ってた、おふくろの趣味、TPPバンドやらクラフトテープやらの籠作りにちょっぴり興味を持ったらしくてな、一時期、おふくろに指導してもらいながら、一番簡単なランチョンマットってヤツを作ってた姿を見たことがあったんだ。
オレよりか、すげぇ、たどたどしい手付きだったし、完成したそれは見るも無惨なほど汚い編み目だった。それから何個か作っていたようだが、全然上手くならなくて、親父はすぐにその趣味を放棄した。
いいか!天性の器用者ってぇのはな、本当にすげぇんだぞ!
オレ、何を力説してるんだろうな・・・。ちょっと虚しくなってきたぞ。
ま、いいけどさ。
オレは、完成させたサンダルを履いてみた。両足な。足の大きさに合わせて編んだからバッチリだ。オレは試しにその場で足踏みしたり、1、2歩歩いてみたりした。
スポッ。
・・・抜げてしまった。足の甲のバンドだけじゃあ、この森の中じゃあ、すぐ抜けてしまうらしい。アスファルト道路とかだったらそんなことはないだろう。
オレはすぐさま改善に取りかかった。市販のサンダルをイメージして、踵カバーや足首バンドを作ることにしたんだ。もちろん、両足ともな。
踵バンドは、甲のバンドとおんなじ感じでいいだろう。一度縦方向に巻いた蔓を解かなきゃならないのは手間だが、仕方がないだろう。
足首バンドは蔓をそのまま使えばいい。今取り付けた踵バンドの両端に穴を開けて蔓を通し、足首で1回巻いてから結べばオッケーだ。
オレは改善したサンダルを試し履きして、その辺を歩いてみた。うん、脱げないし、いい感じだ。
現在のオレの装備:バナナパンツ(ベルト付き)、鈍器(ホルダー付き)、バナナサンダル(両足)
【作者より】
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2021.8.25 Wed. 0:34 初投稿