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リアル異世界転移 お約束のチートはないんかい!  作者: 木浦木ロロ
ここは異世界?
11/1027

★長い夜

オレは起きているとはいえ、万が一、肉食動物に遭遇した時に備えて安全な場所を求めた。


もし肉食動物がいるとしたらどんなだろう?ムカデもどきやアメンボ的な生物がいるんだ。その捕食者的な立ち位置の、より大きな動物がいてもおかしくはない。まさか、この異世界の最上位捕食者がさっきのムカデだなんて言わないよな?


もちろん、最上位捕食者が人間であって欲しいが、なろう読者だったオレとしては、人間のさらなる上に、魔物や魔獣、聖獣や神獣、精霊や妖精、天使や悪魔もいて欲しい気がしなくもない。


が、万が一、そいつらが存在している世界だとしても、外野から鑑賞してる(ぶん)ならいいが、接触するとなると、我が身を危険に(さら)すことは十分(じゅうぶん)に考えられる。


その点を考えると、決して遭遇したくはない、と、ウダウダと矛盾した思考を繰り返してしまう。


オレの本心的には、遭遇したい。ただ、その前提として、オレにそいつらと遭遇してもビクともしない、チートな能力が備わった上でのことだ。


うん。あちらの世界の、何のパワーも持たないまんまの、平々凡々な人間のオレだったら、決して遭遇はしたくはない。せめて意思疎通ができて、良好な関係を築ける存在だったら、それならば、遭遇ウェルカム!なんだが。こればっかりは運を天に任すしかない。


あ、オレ、運がすっげぇ~悪かったんだっけ?


あかん、考えたら(へこ)む・・・。とにかく、目下(もっか)、オレは安全な寝床となり()る場所を探さねばならない。


人間、睡眠は大事だからな、うん。


とはいえ、人の姿など皆無な森だしな~。今んとこ。どうすべ?


人がいなくてもさ、せめて山小屋とか、木こり小屋(ごや)とか、水車小屋的な、たまに職人さんがやってきて、作業するような小屋でもあればいいな、って思ったよ。


オレの鹿児島のじぃちゃん、ばあちゃん()だって、山にある畑の近くに、農具小屋みたいな、しょぼい小屋作って、農具とか肥料とか置きっぱにしてたしな。


そういうの、あってもよくね?


もしくは、古代遺跡とか。なろうテンプレだと、ダンジョンとかさぁ。もち、ダンジョンあっても、オレは絶対、(はい)らねぇがな。絶対、死ぬし。


てくてくてく。


(ある)けど(ある)けど、なんもねぇ~!あるのは、()()()()ばっか!せめて、旅人が火を焚いた跡ぐらいは、あってもよくね?


てくてくてく。


ねっ、ねぇ~っ!な~んも、ねぇ~!木しかねぇ!オレはこの辺りで、なろうテンプレは諦めかけていた。


ふぅ。


オレはこれまでの疲労と、まだわずかにズキズキする腹痛のために、どこかに座り込みたかった。だが、腹痛で気を失っていた(かん)、一応、眠れたんだろうな、まったく眠くなくて、逆にガンガンと目が冴えわたっていた。


この森の木々はデカイ。あちらの世界で、オレが見てきたどんな木々よりもデカイ気がする。幹なんか、オレが両腕を伸ばして抱きついても余るぐらい、ぶっといのがほとんどだし。あちらの世界で、まず、そんな木はテレビやネットでしか見たことがない。


もし、オレがこの森で自給自足して生きていくしかない、ってなったら、家の材料や、薪や(すみ)といった燃料には事欠かないな、な~んて、ふと思う。まあ、斧、ねぇけどな、現状。


・・・斧かぁ・・・。


オレは、ふと、あちらの世界でなろう小説と共にはまっていた、ゾンビ討伐系サバイバルゲームを思い出していた。そういったゲームじゃあ、たいがい、まず石ナイフ作って、石斧作るって流れだったなって。


ああ、もう、あのゲーム、プレイできねぇのか・・・。せっかく拠点拡張終わったところだったのに。あ、そういや、もうそろそろ拡張アプデだったのになぁ~などと、少しだけ、悔しさと寂しさにシュンとするオレだった。


はぁ~。これから、どうすべ?


オレは、ため息を吐くと、もういいかこの(へん)でも、と、近くの大木に背中を預けた。


ふぅ~。


オレはやっとのことで一息つけるな、と夜空を見上げた。あの妙な月、もう、スーパーレッドムーンって呼ぶけど、あいつのおかげでかなり周囲がよく見える。こんな森の中でも、足元を取られずに歩けたのは、あいつのおかげだ。


それでも木々の隙間から見える夜空は、それなりに暗い。小学校の時の課外授業を、ふと思い出す。夕方から夜間に親と共に登校して、習った理科の授業。星空の観察だ。星見表を片手にあれやこれやと、季節と方向、星の輝きで、(なん)って星座なのか、わちゃわちゃやった思い出。


スーパーレッドムーンと負けず劣らずの、星がけっこう多い。あれは一等星(いっとうせい)なんだろうな。あちらの世界の星星(ほしぼし)と同じ星もあれば、マジで黄色とかピンクの光を放つ星もある。


あんなん、あちらの世界で見たことねぇよ。実際にそんな色で放ってたのかもしれねぇが、地上で裸眼で見た(ぶん)には、そんな色をした星なんてなかったんじゃね?


は~ぁ、オレってやっぱ、異世界に来ちまった?


オレは何度目かになるか分からない、大きなため息を吐くと、(なん)とも言えない気持ちで、見慣れぬ星空を眺めていた。


不思議な感じだ。


オレが見慣れた東京の夜空は、ビル群の明かりが強すぎて、夜なのに夜っぽくなかった。鹿児島のばあちゃん()から見た夜空も、真っ暗ではあったが、少し車を走らせようものなら、明るかったな、と。


だが、ここはあのスーパーレッドムーンと星明かり以外は、(なん)の光源も見当たらない。茂みの中や木々の枝や葉の下に入ろうものなら、本当の闇。真っ暗だった。


サラサラと流れる小川の音。キュロキュロと小さな蛙が鳴いているような声。あちらの世界と同じような、リリリリ、と、たぶん鈴虫のような虫の鳴き声。


そういった自然の音が、不安と混乱で、どうにかなっちまいそうだったオレを癒していく。やっぱ、マイナスイオンすげぇなどと思いながら、オレは目を瞑ってその音に、しばし耳を傾けた。


この世界には、虫とオレしかいないのかもしれない。でも、それでも、いいかもしれないとさえ思えてくる。


万が一、肉食動物がいたとして、この静かな夜の世界。音も立てず近づいてくるのは不可能だろう。それにオレの感覚は今、研ぎ澄まされている、気がする。少しでも気配や音を感じとれば、即座に逃げ出すこともできるだろう。


一人で、スローライフ、自給自足、サバイバルライフ、ブッシュクラフト。上等!やってやんよ!って、妙に気が強くさえ、なってしまう。


ただ、一点、非常にありがたいと思ったのは、現時点の天候や気温だ。晴天だし、オレがマッパで夜を過ごしても平気なぐらい、あったかいのは幸いだった。


これが、真冬や嵐の最中だったら、オレは即死していただろう。もしかしたら、それだけが、オレをこの世界に転移させた存在、神的なヤツの唯一の加護だったのかもしれない。


たったそれだけか~い?ってツッコミたくはなるが、無ければ無いで過酷な状況だったことは想像に(かた)くないんで、一応、感謝はしておく。一応、な。


でも、もっと加護くれや、とも言っておく。


う~ん、でもどうなんだろう?この世界にも、四季というか季節の変化、気候や気温、天候の変化はあるとは思うんだが?もしかしたら、晴天ばっか、気温一定のナイスな世界かもしれない。異世界はいろいろあるらしい?からな。なろう的に。そんな異世界があってもおかしかない。


リリリリ。シシシシ。キュロロロ。ミンミンミン。


・・・ど~でもいいけどさ。ほら、ぜってぇ~、擬声語(ぎせいご)って足りねぇじゃん。オレのオリジナル足しても表現しきれね~じゃん。たっくさん、虫、いんな~。ちょい冷や汗が出てきたぜ。オレの前に姿を見せんじゃねぇよ!と心の中で念押ししとく。誰に?


は~。これからどうすっかなぁ~。


気を失っても元の世界に戻れてねぇ、ってか、夢から覚めてねぇってことは、ここがやっぱ現実なんだよな~。オレ、異世界にいんだよなぁ~、今。


なろうテンプレじゃあさ、異世界転移の場合、だよ?すぐに誰かに出会うなり、村に入れるなり、すんじゃね?


なのに、オレ、いつまでもここ、訳分からん森の中から出られねぇ。誰にも遭遇しねぇ。


そんなんある?


ちょっと、オレ、思ったんだけどさ。オレ、なろうテンプレから外れた、特殊パターンの転移したヤツなんじゃね?って。もし、それならさ、オレ、どうすりゃいいの?って。


そう考えが到ったオレは、急激に押し寄せてくる不安で、寒くなってきた。


やっべぇ、マジで!


オレ、マジで、ここで一人、生きてかなきゃならねぇんじゃね?


あ、でも、待てよ。なろうテンプレでも、そんな作品あったじゃん。数ヵ月とか数年経って、やっと他の人間とか魔獣とかと出会うってパターン!


・・・。


ってかさ、小説の中じゃあ、さくさく時は流れるかもしれないけどさ、オレ、今、ここ、これが現実なわけよ。一秒は一秒のままなわけよ。オレ、数ヵ月とか数年、一人で生きてかなきゃならないわけなんよ?


ちょっと、ハードすぎね?


オレがさ、もし、あちらの世界でさ、○○族ですって、海外の、失礼だけどもさ、発展途上国とかの、しかも、めっちゃど田舎の、外れの、少数民族とかでさ、けっこう自給自足に近い生活を送ってきたような人間ならさ、あ、あと、趣味でブッシュクラフトとかしてるおっさんとかならさ、まだ、生き抜いていけるかもしれないよ?


でも、オレさ、ちょっと、おっさんになってっけど、現代っ子よ?文明最先端な東京で、たまに鹿児島の田舎で育った程度の、おぼっちゃん育ちなんよ?


無理じゃね?


あ、ブッシュクラフトってさっきから言ってっけど、知ってる?まあ、知らんかったら、そっちでググってくれよ。なんか着の身着のまま?で、山とか森に入って、そこにあるモンだけであれこれ使って、サバイバル生活を楽しむ的な?


オレも知らんかったけど、たまたまYouTube見てたら、海外の動画であがってきたからさ。なんや?それ?ってなったんよね。まあ、サバイバルとどう違うんかっちゅ~と、ブッシュクラフトは趣味というか、それを楽しんでやってるところが違うんじゃないかって、個人的にはそう思ったんだが。実際の違いはよく分からん。


オレは、あちらの世界で見たブッシュクラフト的な動画を、記憶の中からできるだけ引っ張り出した。


引っ張り出した、んだが・・・。えっと、最低でも斧かナイフは持ってた。あの動画主(どうがぬし)たちは。(ぬし)なんか撮影者なんかは知らんが。たぶん、(ぬし)


(ぬし)たちは最低でもナイフか斧は持ってた。オレが見た動画主(どうがぬし)たちは。うん。


それに、オレ、あんまり真剣にそういった動画を見てなかった。だってそうじゃん?まさか自分がそれを実践しなきゃいけない立場になるなんて思ってもないじゃん?


く、やっべぇ~。オレ、ここで一人で生きていける気がまったくしねぇんだが?


いや、やるしかない!オレはもう二度とあんな痛い想いをして死にたくはねぇ。まったく痛くねぇなら死んでもいいかもとは思うが。が!オレはあの時、あの瞬間。たぶん、ホントに死ぬ瞬間を経験したんだと思うんだけど・・・。


あの、オレの意識というか、魂?が、無くなるっていうか、失われる?()になる?()に還る?って、なんか、そんな表現しか思い付かないんだけど・・・。


あの、瞬間は、正直、めっちゃ怖かった。ああ、これが死ぬってことなんかなって。死んでいった人たちは皆、こんな想いをして死んでいったんかな?って思ったんだけど。


なんだろう?とにかく、なんて言っていいか分からないけど、とにかく、めちゃくちゃ怖かったんだ。


それはオレが包丁で刺された恐怖とか、そんなんとは別次元の恐怖だったと思う。なんか、あれが最後。もう二度とオレがオレじゃなくなる、オレの存在がなくなる!


なんか、あの瞬間、そんなこととか、いろんなことがワッと、あの一瞬でオレの中を駆け巡ったんだ。


それは、ただ、一言。


こわい。


ただ、その感覚だけ。


こわい。その感覚に何とかして(あらが)おうとするオレ。


そしてオレは、何者かに訴える。心の声で。思考で。


オレはまだやりたいことがあるんだ!やり残したことがあるんだ!って。それはきっと神なのか、創造主(そうぞうしゅ)ってヤツに対してなのか、いるのか、いないのか、知らんのだがな。とにかく、何かに生きたい!死にたくない!と訴えたんだ。それははっきりと覚えている。


だから、なのか・・・。オレはこうして異世界に転移させられて、こうして生きている。


あの時のえもいわれぬ恐怖を覚えているから。オレはもう二度と死にたくないって思うんだ。死にたくないから、異世界だろうと、どこだろうと、無理だろうと、なんだろうと、やるしかねぇ!って思うんだ。


オレは閉じていた(まぶた)を明けた。決意を新たに。


目の前には変わらぬ夜の森。ここは異世界。それがオレの現実。だが、オレは意地でも生き抜く決意をしたんだ。槍が降ろうがなんだろうが、もう動じねぇぜ!


あ、でも雨や雪が降ってきたら動じるかも・・・。ま、そんなすぐに季節や天候が変わるわきゃぁねぇか。


オレは自身の単純な決意と、グラつく優柔不断さに苦笑した。ま、いつものオレだけどさ、そこんとこ。


いろいろ思考を巡らせたせいか、オレはどうやら今、すっげぇー興奮しているらしい。夜中だというのに、スーパーレッドムーンや星たちが明るいこともあって、何かしたくてウズウズしたくなっていた。


だが、そんなオレの気持ちとは裏腹に、さっきの腹痛が若干、尾を引いていて、少し痛い。体を丸くして横になっていたい。眠くはないんだがな。


オレは、自身が座っている周辺の地面を右手でサワサワして確かめた。地面と言っても、オレは今、巨木の幹を背もたれにして、その根本(ねもと)に座っている。


ボコボコと隆起している幹の感じは、昔、ばあちゃん()がある集落に、面した道路沿いに生えていたガジュマルの樹に似ていた。複数の幹が寄せ集まってそれぞれの枝葉が、四方八方、まるで天球のように末広がって強烈な闇を作っていたから、よくは見えなかった。


けれども闇は闇で陰を作る。その木の根本(ねもと)は、地面に一度潜ってから、また地上に這い出ているのが分かる。オレはその根本が沈む前の、幹寄りの場所に座っていた。ぶっといせいか、座っていても安定感がある。固くて、ケツがいてぇけどな。


それに座る(ぶん)には安定感はあるが、寝るには不十分だった。第一、ここで横になったり寝たりするには危険すぎる。まだ肉食動物がいる可能性は捨てきれないのだ。


「ハーッ。」


オレは上方(じょうほう)に腕を伸ばして、手を裏手に組ながら伸びをした。とりあえず、腹の痛みも多少は治まってきたし、背中というか後方だけは安全な場所は確保できたんだ。今はこれだけでもヨシとしなくちゃな。なんも無いよりはマシなんだから。


・・・それにしても、オレ、よく無事だったよな。あの河原で気ぃー失ってた最中、ってつくづく思うよ。マジ、奇跡。それこそ、神様の加護?それとも単に運が良かっただけ?それともやっぱ動物いないん?


ま、もう、どっちでもいいや。どうせ答えはオレには分からないんだし。


オレは上方へ伸ばした腕を、伸ばしたまんま、前方へと倒して、う~んと、前方へ引っ張ってから、組んでいた手を()いた。解いた手と手、指と指の隙間から、スーパーレッドムーンと、その周囲に浮かぶ星が見えた。


「・・・どうすっかなぁ~?これから・・・。」


オレは両手を解きながら、そのまま木の幹に背中を預けた。なんともなく、そのまま夜空を眺めた。


「・・・。」


まずは、食い物の確保だろ?それから人間(ひと)を探さなくちゃだろ・・・。それから。


「それから・・・。」


オレはボソッと口に出していた。それから・・・。それから?オレはここにきて、ふとあることに思い至ってしまった。


運良く食料を見つけることができたとしよう。それでもって、この世界の人間、もしくは人間(ひと)もどき、エルフとか、人語を話すドラゴンとか聖獣とかに遭遇できたとしよう。もちろん、そいつらはオレに友好的。


そしたら・・・オレは・・・。それから、どうするんだろう?


いろんなことが一度にありすぎて混乱していたせいもあるんだろう。しかも、信じられないことに異世界転移を果たしてしまったことも上乗せされていたに違いない。


だが。オレは唐突に気づいてしまったんだ。この先、たぶん、何十年と、家族も知り合いもいないこの異世界で、オレは一人で生きてかなきゃならないってリアルを。


たとえ、この世界の人間と出会って親しくなったとしても・・・。


オレは自覚してしまったんだ。


異世界転移だ、魔法だ、チートだ、ドラゴンだ、などとウカれていた自分が一瞬で吹っ飛んだ。


ああ。オレ、この世界でホントに一人なんだな、って。


そう気づいたら、猛烈な不安が押し寄せてきたんだ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

どうでもいいが、暇だ。暇すぎる。ここにスマホでもあればいいんだが、生憎ない。スマホどころか本の一つ、紙すらもない。あるのは、俺が集めた(つる)(たば)、それからバナナパンツ。


オレはもう一度ため息を吐いた。せめて服だけでも欲しかった・・・。これはオレがまともな服を手に(い)入れるまで、あるいは作るまで、愚痴らずにはいられないだろう。


さて、せっかくなので、やることリストでも作ろうか。オレはあっちの世界でも無印用品のチェックリスト、商品名は知らんが、そのメモでリストアップするのが日課だった。休みの日にやることリストだったり、買い物リストだったり、どこから掃除をするかリスト。


ま、もっとも独り暮らしを止めて実家へ戻った辺りから使わなくなったが。ちなみになぜ、実家に帰ったかと言うと、親父がちょっとばかし膝を悪くして、通院だのに足が必要になったからだ。おふくろは原付免許しか持ってないし、パートどころかバリバリのフル勤務、正社員で働いているし、兄貴は他県に戸建ての家を建てて奥さんと子供二人と暮らしているから、必然、実家の近くで独り暮らししていたオレが戻ることになった。


まぁ、そこまで親父の膝が悪いわけじゃないんだが、家事が面倒くさくなったんだ。例の別れた彼女と付き合いだしたのは、その後だ。彼女も実家暮らしだったから、付き合うのは結構大変だったんだが、まぁ、そんなことは今どうでもいいな。


で、やることリストだ。もちろん、チェックリストのメモ帳などはここにはないから、頭の中で整理するだけだ。



1、人間を探す! 

これは最重要事項だな。何はともあれ、一刻も早くこれは成し遂げなくちゃならない。うん。



2、火を(おこ)す!

これも早急だな。水は今後も小川沿いに行動するつもりだから手に入るとして、また腹を壊したくないから沸騰は必須だ。沸騰したから腹を壊さなくなるかは疑問ではあるが、しないよりはマシだろうってことで。


3、安全な寝床を確保する!

どんな動物がいるか分からないし、そもそももうムカデやアリに体中を()われたくない。


4、靴を作る!

さすがに数時間も歩いていたから足の裏が痛くなってきた。バナナの葉でサンダルっぽいものぐらいならすぐ作れそうだ。オレはばあちゃん家で、正月用にしめ縄を編んだり、草履を編んだこともあるが、そもそも縄になりそうな葉が見当たらない。


5、食べ物を確保する!

小川の水のように腹を壊さない食べ物を探す。実は今日、歩きながら数種類のきのこを見付けはしたんだが、きのこは迂闊(うかつ)に食べると死ぬ可能性が高い危険な食べ物だ。素人は迂闊に手を出したらいかん食べ物だとオレは知っているぞ。


6、服を作る!

いつまでもパンツだけなのは嫌だ。



「ま、こんなとこかな?」


時間にして2分でリストアップは完了してしまった。



「はぁっ・・・。夜って長いな・・・。」

【作者より】





【更新履歴】


2023.10.31 Tues. 0:25 加筆/誤字脱字/読み上げアプリ修正中

2021. 8.23 Mon. 17:30 初投稿

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