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世間知らずのお姫様と二人の罪人の逃亡記  作者: 吉世大海(近江 由)
出会い~ライラック王国編~
33/328

一息つくお姫様

 


 宿に着くと、ミナミとルーイは直ぐに部屋に連れて行かれた。


 そこは、ベッドが二つと浴室、トイレのついたこの宿にしてはいい部屋だった。


 主らしき男がミナミに入浴と着替えを勧めた。


 その時にミナミは自分の身体と服が濡れてとても冷えていることに気付いた。


 逃げるのに精一杯なのと不安でそれどころじゃなかった。


「見張っているから…大丈夫。」

 ルーイはミナミが覗かれるのを心配していると思ったのか、両手を広げて何かを強調していた。


「…君も着替えたら?」


 ルーイに冷たく言い放ったのは、顔に傷のある青年だった。


 ルーイは彼を見て明らかに警戒を示した。


 その理由はミナミにもわかっている。


 ミナミとルーイを案内してくれたのは、宿の主であるアロウという初老の男と、二人の用心棒の青年だ。


 色の白い白髪の青年と、顔に傷のある青年とミナミは認識している。


 そのうちの顔に傷のある青年は、ミナミを見て明らかに何か覚えのある表情をしていたのだ。


 そういえば、そんなことが最近あった気がしたが、体が冷えて震えて来るとそれどころではない。


「二人それぞれ見張りに付けますから、ご安心ください。」

 アロウはミナミを安心させるように言った。


「俺にはいらない。」

 ルーイは頑なに拒否した。


「僕たちはアロウさんの用心棒だよね?…これは仕事じゃないよ。」

 色白の青年は首を振った。


「食費も全て出そう。」


「…子守は得意だよ。」

 アロウの言葉を聞いて白髪の青年は意見を変えた。


 その横では顔に傷のある青年が溜息をついていた。


「…それより、姫様っていえばいいの?」

 顔に傷のある青年はミナミを横目で見た。


 ミナミは視線を受けてどきりとした。


 別に彼の顔がいいからどきりとしたわけではない。

 彼の目が、何かを射るような目であったからだ。


「その制服目障りだから…早く着替えて欲しいんだ。」

 彼はミナミの着ている制服が気に食わないようだ。


 ミナミは自分の着ている服が自分のものでないことを思い出した。


「あ…」


 この服は、ミナミを助けてくれた赤毛の青年、フロレンスのものだ。


「帝国の高官の服ですね…。」

 アロウもミナミの着ている服が何なのかわかっているようだ。


「まあ、詳しい話は後でします。とにかく…ミナミは早く風呂に入って…着替えろよ。」

 ルーイは半ば強制的にミナミを浴室に押し込んだ。


「え…あ…わかったから…って…」

 ミナミはルーイの勢いと有無を言わせない物言いに、たじろぎながら少し反抗したが、あっけなく押し込められた。


 浴室の扉が閉まり、部屋にはルーイとアロウと用心棒の青年たちだけになった。


「…着替えどうするの?」

 白髪の青年はミナミがいなくなってから呆れたように呟いた。


「…」

 ルーイは縋るようにアロウを見た。


 ミナミは聞いていなかったので知らないが、着替えの用意でひと悶着があったらしい。




マルコム:

主人公。茶色の髪と瞳をしている。整った顔立ちで人目を引くが、右頬に深い切り傷のあとがある。槍使いで顔に似合わず怪力。身体能力が高く、武器を使わなくても強い。

追われている身であるため、本名は伏せている。


シューラ:

主人公。白い髪と赤い目、牙のような八重歯が特徴的。日の光に弱く、フードを被っていることが多い。長い刀を使う。マルコムよりも繊細な戦い方をする。

追われている身であるため、本名は伏せている。マルコムと二人の時だけ本名で呼び合う。



ミナミ:

ライラック王国王家の末っ子。王に溺愛されている。国王殺害を目撃してしまい、追われる身になる。好奇心旺盛で天真爛漫。お転婆と名高い。汚いものを知らずに生きてきた。


ルーイ:

ライラック王国の兵士。ミナミの幼馴染。市民階級であるが、いつかミナミと並ぶために将軍を目指し剣や勉強に励んでいる。



フロレンス:

ミナミを王宮から逃がしてくれた帝国の公爵家の若い青年。赤い長髪を一つに束ねている。


オリオン:

ライラック王国第一王子。ミナミの兄。王位継承権第一位。


アロウ:

ライラック王国で表では武器屋、裏では宿屋を営業する男。裏の情報を城に流していた。国王の古い友人でマルコムとシューラの雇い主。


ホクト:

ライラック王国第二王子。ミナミの兄。王位継承権第二位。父である国王を手にかける。



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